歯医者の話
2012年の日記を再掲載
小学生の頃、近所の歯医者で虫歯治療をして以来、かれこれ十数年ほど歯医者という存在すら忘れて生活していて、特に虫歯の痛みに苛まれることなくお気楽なデンタルライフを送っていた。
数年前、記憶に新しい「親知らずの反乱」が起こったときに一回通院はしたものの、結局親知らずは抜かず、奥歯に地雷をかかえたままになっている。いまのところ爆弾は何事もなくおとなしく口の奥で鎮座している。
その時はまあまあ痛かったのだが、まあ親知らずだから痛いのも当然だよなと思っていた。
今年の8月下旬、妙に前歯に今まで感じたことのないような違和感がある。かゆみにも似た痛みで、なんだろう、前歯の裏側で悪のカーニバルが開かれているようなうざったい感覚がある。気のせいだろうと数日放置していたが、やはり気のせいであっても気になる。せめて通常なのか異常なのか原因をつきとめないとと発起し歯医者へ行く。
「これ、内側に虫歯がありますねぇ。」
先生に鏡で前歯の裏側を見せてもらったが、確かに歯の内側に黒い丸が見える。
なんで?酔っ払ってそのまま寝ちゃうことは多々あるが、歯磨きは真面目にしているつもりだったのにその努力の甲斐なく虫歯菌の繁栄を許してしまったというのか。
酔っ払ってそのまま寝ちゃうのがいけないのか。
聞けば、私の前歯はもともと詰め物がしてあったらしくその隙間から菌が入って虫歯が進行したとのこと。それ以前にこの前歯(正確には前歯のとなりの歯)が100%純粋な歯じゃなかったということにまず驚いた。おそらく幼少期に治療したものだと思うが、当時歯医者さんは私にとって夢のパラダイスであり、『ドラゴンボール』と『白鳥麗子でございます!』を読むのが楽しかったのと、歯型を取るときニチャッとしたものを噛まされるのが楽しかった記憶しかない。
「とりあえず、そんなに痛くないなら様子を見ましょう。痛むようなら神経を抜きましょう。次回までに考えておいてください。」
神経を抜く…?
そんな状態まで進行している自覚がなかったので驚いた。歯の神経を抜いたら痛みはなくなるものの、歯がもろくなったり変色したりするらしい。前歯だからな~~~。
おいおい考えときます。とあやふやな返事をして歯医者を後にする。
そんなこんなで己の歯の状態に無知であった自分に鞭を打つような治療ライフが始まった。
「病は気から」とはよく言ったもので、「私の歯は虫歯なんだ」と自覚した途端に、今まで気のせいかもと感じていた歯の違和感が激痛に生まれ変わる。
本当に虫歯ってこんなに痛いものなのかと字のごとく痛感した。
ものを食べても痛いし、喋って上の歯と下の歯が当たるとものすごく痛いし、寝ようと思っても悪のカーニバルはいよいよ盛り上がりを増す。
こりゃたまらん!と思い次の日「神経抜きます!」と予約の電話を入れる。
しかしなかなか人気の歯医者で予約が二週間先でないと取れない。
このカーニバルを携えてコミティアに行かねばいけないのか…?
この頃の私は痛みを感じながらも東京で行われるコミティアを夢見て心を高ぶらせていた。しかし歯が痛すぎて上手く喋れない。タ行やザ行がこの世からなくなればいいのにと思っていた。
5年間待ったコミティアの思い出が歯痛では拉致があかないので、鎮痛剤バファリンの力を借りることにした。ホントに効くのか猜疑の念しかなかったが、いまや藁にでもすがりたい思い。結果、バファリンは効く。
そして強力なアイテムがもう一つ。
歯が痛いのなら…と教えてもらった「今治水」という薬。
地方がら「いまばりみず」と読みそうではあるが「こんじすい」と読む。
虫歯に直接つける液体で、なんでも2分以内に効くらしい。
結果、この2つが非常に役に立った。
痛みからも解放され、コミティアにも無事参加でき、カーニバルは口から心へと移った。その後虫歯もちょちょいと治療され、やはりここは予約が殺到するわけだと納得した。
でも結局コミティアでは売り子さんとあまり喋れなかった。
虫歯と一緒に口下手も治療してもらいたかった。
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